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色とりどりの傘を避けながら、ポケットから携帯を取り出して着信履歴を辿る。
足を止めずに耳に当てると、すぐに大好きな声が届いた。
『美亜？』
「陽、今どこ？」
息が乱れて、声が弾む。
ヒールが蹴って、水が跳ねる。
『今？ 会社に戻ってる途中だけど』
「どの辺にいる？」
制服が雨を含んで、ゆっくりと重くなる。
濡れたスカートが、足に纏わり付くせいで上手く走れなくて、一旦足を止めた。
『どの辺って――』
もう一度走り出そうとした時、電話の向こうの声が途切れた。
わたしを濡らす雨も、途切れた。
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