序章 魂は語る

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序章 魂は語る

 かつて私は一度だけ、漢の大将軍である淮陰侯韓信(わいいんこうかんしん)と言葉を交わしたことがある。このときの会話はごく短時間に過ぎなかったが、私には非常に印象深いものであった。  当時の彼は長安城内に邸宅を構えており、私たちの会見は、私が彼の邸宅へ赴く形で行われた。そのとき彼は庭先に咲いている花を指差し、特有の物憂い表情とともに、おもむろに口を開いた。 「私は花には詳しくはないが、この花は山百合というそうだ。その名の通りもともとは高山に育つ品種なのだが、気の遠くなりそうなほどの長い年月を重ねて環境に適応し、今では平地でも花を咲かせる。……思うに、人はこの花を見習うべきだ」  このとき私は、彼がなにを言いたいのかがよくわからず、気の利いた返答ができずにいた。しかし察しのいい彼は、私のそのような様子にすぐ気付いたようで、説明を付け加えてくれた。     
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