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新しい仕事
「貴方は、ボランティアの統率係ですから。」
事務局に初めて出勤すると、いきなりそう言われた。二十人程居た同僚にも、同じ様に各々役割が与えられた。
ゲーム会社を起業して東京で成功した社長が、この二年程地元で行っているイベントを、今回は県の事業として大々的にやる事になった。その為に創られた実行事務局は、国の補助金を降ろした緊急雇用だった。
「まあ、ぼつぼつ行きましょうや。」
仕事の指示をする男は、口癖の様にそう言った。噂では、この男だけが委託された民間会社の正社員になる事が決まっているらしい。しかし、仕事の内容は何が決まっていると言う事もなく、同僚の中に数人居る、前回までのイベントに参加した事がある人間の話を頼りに、自分達が手探りで進めていくしかなかった。
「県の職員と貴方達は幾ら働いても良いけれど、ボランティアには無理をさせない様に。」
県の若い職員がそう言った。
「一人前の仕事が出来る人間を半値で使えば、半分ボランティアやろうに、えらい差別やな。」
そう思っても誰も意見する者は居ない。
「よく働くなぁ。」
時折り、一緒に働いている誰かにそう言うと、
「仕事を貰ったんだから当然でしょう。」
と、大抵が応えた。
メンバーは、二十代も居たがほとんどが三十代で、何処かの企業で一人前の仕事をした事がある者ばかりだった。
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