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いつもどんな相手にもにこやかに対応する光には珍しい事だと、誠人は戸惑った。一方のライアンは、意表を突かれたような表情をしたが、誠人と光を何度か交互に見て、納得したかのように頷いて、意味ありげな笑みを浮かべた。
「なるほど」
「あの、ライアン……」
「さっきの話の続きは、また今度」
ライアンからそう告げられ誠人は曖昧に頷いた。光に引っ張られる形で廊下をしばらく歩くと、光はくるりと振り返って誠人に詰め寄った。
「さっきの話って何?」
「何でもない」
ライアンからの引き抜きの話は、誰にも話さない方が良いと判断した。ライアンが本気かどうかも分からないし、もし本気だとしてもその話を受けるかどうか、今の誠人には決められなかった。
「何でもないなら、言えるでしょ」
「……共同研究の話だよ」
「嘘だね」
光は即否定した。その待ったを言わせない切り替えしに、誠人はうっ、と言葉に詰まる。
「まこちゃん、僕と付き合ってるって忘れてないよね」
「おい、そう言う話を廊下でするな!」
誠人は慌てて周りを見渡す。幸いにも誰の姿もなかった。光は誠人の言葉を無視して、じっと誠人の顔を見つめている。
「付き合ってるからって、何でもかんでも言わなきゃいけない訳じゃないだろ」
小声で誠人は反論した。
「ふぅん。なるほど、まこちゃんがすぐに彼女から振られる訳だ」
その言葉に誠人はカチンとくる。なんで今そんな事を言われないといけないんだ。
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