【5】

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 いつもどんな相手にもにこやかに対応する光には珍しい事だと、誠人は戸惑った。一方のライアンは、意表を突かれたような表情をしたが、誠人と光を何度か交互に見て、納得したかのように頷いて、意味ありげな笑みを浮かべた。 「なるほど」 「あの、ライアン……」 「さっきの話の続きは、また今度」  ライアンからそう告げられ誠人は曖昧に頷いた。光に引っ張られる形で廊下をしばらく歩くと、光はくるりと振り返って誠人に詰め寄った。 「さっきの話って何?」 「何でもない」  ライアンからの引き抜きの話は、誰にも話さない方が良いと判断した。ライアンが本気かどうかも分からないし、もし本気だとしてもその話を受けるかどうか、今の誠人には決められなかった。 「何でもないなら、言えるでしょ」 「……共同研究の話だよ」 「嘘だね」  光は即否定した。その待ったを言わせない切り替えしに、誠人はうっ、と言葉に詰まる。 「まこちゃん、僕と付き合ってるって忘れてないよね」 「おい、そう言う話を廊下でするな!」  誠人は慌てて周りを見渡す。幸いにも誰の姿もなかった。光は誠人の言葉を無視して、じっと誠人の顔を見つめている。 「付き合ってるからって、何でもかんでも言わなきゃいけない訳じゃないだろ」  小声で誠人は反論した。 「ふぅん。なるほど、まこちゃんがすぐに彼女から振られる訳だ」  その言葉に誠人はカチンとくる。なんで今そんな事を言われないといけないんだ。     
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