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 気まずい空気が間に流れているところを、光がのんびりした口調で新山に言い聞かせる。 「あとダメもとで、実験用の純水でパソコン洗っておいて。海水をかぶったまま乾燥させると、完全に壊れるから。メモリさえ無事なら、日本に帰って業者に頼めば全データ回収できるかもしれないし」 「わかりました。隣の実験室でやってみます」  涙を拭って、新山はパソコンを抱えて部屋を出て行った。 「間に合って良かった。僕はMac派だから、Windowsのコマンドプロンプトのコマンド忘れててちょっと焦ったけど」  誠人も職業柄パソコンを使う機会は多いし、データ解析やマクロの組み立てなんかは比較的出来る方だけれど、コマンドプロンプトを何の資料もなしで打ち込んで、コンピュータを動かすことは難しいだろう。しかも今回は使えない文字があるという制約のもとだ。 「凄いな、お前」 「そうかな。データ処理を主にやっている人にとっては全然普通だと思うけど」  と、そこまで話して、光は誠人の後ろに立っていたライアンに気が付いたのか、視線をそちらに向けた。 「………なにか?」 「いや、さっき作業を見ていたが、なかなかいい技術を持っているな、と思って」 「それは、どうも」 「君の名前は?」 「ヒカリ・ミズモトです」     
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