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「ヒカリ。日本語でシャインという意味だったかな」
「光は今、海洋大学の大学院一年生で、専攻は人工衛星による植物プランクトンのモニタリングです」
誠人がライアンに説明した。
「へぇ。でもわざわざ船に? 人工衛星ならば、航海に参加しなくても良いんじゃないか?」
「人工衛星によるデータは、広域において取得できるメリットがありますが、その正確性については事前に現地調査が必要です。実際にそこまでやっている人間は少ないですが」
光は誠人よりも数段流暢な英語で淡々とライアンに説明した。父親の影響で英語も含め数か国語は光も諷もそれなりに喋れると聞いてはいたのだが、ほぼネイティブと変わらない速度とイントネーションで少々面食らった。
「ふぅん、面白いね。今の世の中、取得できるデータ量は増えているが、それを扱えるバイオロジストは少ない。逆にデータ解析の専門家は、バイオを理解できない。どっちも扱える人間は珍しいよ。マコトを目当てにやってきたが、君もなかなか」
ライアンは満足そうに頷いている。一方で、その言葉を聞いた光はあからさまに綺麗な顔を歪めた。そして何故か「行こう、まこちゃん」と誠人の腕をとる。
「いや、俺はまだ作業が……」
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