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「――こっち通るなら、さっさと行け」
誠人が声を掛けると、女学生は恐る恐るといった様子で誠人と俯いたまま黙り込んでいる光の横を通り過ぎようとしたが、何故かそこで足を止めた。
「……あの」
「あ?」
よく見ると、その女学生は先程光がパソコンからデータを取り出してやった新山だった。
「水元さん、大丈夫ですか?」
誠人の方など見ずに、新山は光に声を掛ける。
「……え?」
光がようやく顔を上げて新山の姿を認めた。その感情が抜け降おちた表情を見て、新山は息を呑んだかと思うと、くるりと誠人の方を向き直った。
「あ、あの、酷くないですか? 束本さん、いつもいつも自分が正しいって顔してますけど、水元さんの方が私達の事を気に掛けてくれて助けてくれてるのに、一方的に責めるなんて!」
新山の言葉に誠人は面食らう。こいつ、何言ってるんだ? と思いつつも、言われた言葉に黙っている事はもちろん出来ない。
「何も知らないくせに、よくそこまで言えるな」
「聞く必要はないです。水元さん、行きましょう。こんな人の気持ちも分からない人に怒られたって、気にしなくて良いですよ」
光は何か言いた気に誠人を見詰めたが、新山に腕を取られて連れ去られる。
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