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 手を叩きつければ砕け散ってしまいそうな程に高く澄んだ秋空が、遠い水平線と交わっている。  束原誠人(つかはらまこと)はそんな眩しい空を顰め面で眺めながら、舌先にのせた酔い止めの錠剤を水もなしに呑み込んだ。  空色と海の碧。  異なる青色が交わりながら波打つ海原を見て、心洗われる人間もいれば、誠人のように反射的に吐き気しか覚えない人間もいる訳で、経験による脳内補正というのは厄介だと思う。  防水性のデジタル腕時計に目を落とすと、十二時十五分が表示されている。  鉄芯が仕込まれた革製の安全靴で甲板の床を鳴らしつつ、誠人は船内に戻った。 「おい、次の観測点に着くぞ」  ヘルメットを押し上げて、研究室内で作業をしていた海洋大学の学生達に声を掛けると、何やら集まってこそこそと話し合っていた奴らが揃ってびくりと肩を震わせた。 「どうした?」 「……えっと、いや、あの、すぐに行くんで!」  視線を落ち着きなく逸らしながらそんな返事をされて、そうかですか、なんて引き下がるバカがいる訳ないだろ、と内心舌打ちをする。     
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