いつも側に…

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やがてお見舞い用のアレンジメントが出来上がると、 「……もし気まずくなければ、またお手伝いはさせてください。それじゃ、今日はこれで……」 と遥香は頭を下げ、バッグを持って店を出て行こうとする。 「……待ってください!」 とっさに晋也は、遥香を呼び止めた。遥香も反射的に立ち止まり、晋也へと振り返った。 「瀬山高原に行きませんか?」 それは、晋也本人でさえ思いもよらなかった誘いだった。 「瀬山高原…?」 「瀬山高原には、コスモス園があるでしょう?……きっとご主人…尚人さんも喜んでくれると思うから……」 遥香の瞳が微かに見開かれた。自分の思いを晋也がくみ取ってくれていることを知って、その眼差しが深くなる。 「あの人がいた頃は、この季節になると必ず行ってた場所です。……でも、私は車に乗れないから、あの出来事以来は行けなくなってしまって……」 それは、おのずと晋也の誘いを受けるという答えだった。
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