スライドショーに思いを馳せて

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だから、そこから丸4年となる去年、彩音の結婚相手が晃司だと知ったときはとにかく驚いた。いつ再会したのか、いつヨリを戻したのか。分からないことだらけだった。 彩音の話によると、社会人4年目の秋に晃司が転勤で東京に戻ってきて、偶然ライブハウスで彩音と再会したそうだ。動画にも大きく「運命の再会」なんてコメントが書かれているけど、確かにあんな大きなハコで、約束もしていないのにお互いを見つけるなんて運命としか思えない。別れて3年以上経っても、二人は趣味の部分で繋がっていて、それがもたらした奇跡なのかもしれない。 その再会がきっかけで二人はまた付き合い始め、翌年、つまり去年の今日、彩音の27歳の誕生日に晃司はプロポーズをした。そして、めでたく今日という日を迎えた。 2013年6月15日。土曜日で大安で、彩音の誕生日で、ジューンブライドで。見事なまでに結婚式にぴったりの日。 「え、結婚? わぁ、おめでとう。相手はどんな人?」 『実はね……、相手は晃司なの』 「え、晃司って、あの晃司?」 『うん、元サヤってやつで。なんか照れるんだけど』 あの日の彩音からの電話は、その声からも幸せそうな様子が分かった。 そこから1時間くらい話して、晃司が転勤で戻ってきたこと、ライブで再会したこと、何度か会った後でもう一度付き合うことになったこと、誕生日のデートでプロポーズされたこと。二人の8ヶ月のことを一気に聞いた。 別れてからも彩音はきっと晃司のことが好きだったのだろう。彩音が直接そう言ったわけじゃないけど、そう感じ取れる口調だった。彼女をよく知る私にはそれが分かる。 その時私は、おめでとうと口にしながら、なぜかもう一度失恋したような気分だった。かつて彩音と2年も付き合っていた晃司と私が付き合うなんて考えてもなかったから変な話だけど。だけど確かに、あの冬ほどではないけど、胸が痛かったのだ。
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