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台車を使い、健太がやっとのことで部屋まで運び入れたダンボール箱を内藤が軽々と抱えている。
「……重くない?」
「そこまで重くないけど。持ってこなくてよかったのなら、またあっちの部屋に戻してくるな」
「ま、待って! やっぱりこっちにお願い」
健太が本棚の前を指さすと、内藤はまたも軽々と箱を床に置いた。
「あとは? 手伝うことがあったら言ってよ」
「ええと……俺の部屋はもうほとんど片づいたから大丈夫。内藤の部屋はもう片づいた?」
健太が訊ねると、内藤は一瞬口を噤み、そして「俺のところは後でもいいかな」と答えた。
人の世話を焼くのは進んでするのに、どうやら自分こととなると面倒になるらしい。
「ダメだよ。そんなこと言ってると、すぐに新学期が始まるだろ? 片づけどころじゃなくなるよ」
渋る内藤の手を引き彼の部屋まで連れて行く。
「うわぁ」
机とベッド、それにクローゼットがひとつ。あとは部屋の空きスペースに、梱包されたまま手つかずの段ボール箱が所狭しと置かれている。
「内藤……箱になにも書いてないんだけど」
これでは中になにが入っているのかわからない。
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