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 直冬はため息を吐く。こうしていきなり立たされるときは長いキスが待ち受けていると、今朝学んだばかりだ。 「なあ、……さっきしたろ?」 「やりたいときにやる」 「嫌だ!」 「嫌なら床に転がして裸に剥く」  章久は直冬の脇の下に手を食い込ませ、力尽くで椅子から引きずり下ろそうとする。慌てて直冬は立ち上がり、結局上手い交換条件も見つけられないまままた壁際のカウチソファに連れて行かれた。  朝のキスもここでだった。押し倒され脚の間に入り込まれて受け入れさせられるキスは、容易くキス以上のものに変わりそうで怖い。  朝は勢いよく覆い被さられたせいで、直冬は頭を壁にぶつけ、大騒ぎした。章久はよほどそれが面倒だったらしく、今は直冬の背を支えながら慎重に押し倒す。この間もひどく嫌だ。  嫌なのだけれど、真上から覆い被さられる今でさえ危機感が遠い。直冬にとって章久の顔は見慣れない景色と同じようなもので、視線が合っていることにすら気付かずついつらつらと眺めてしまう。 「……なんで俺とキスなんかしたいんだ?」 「暇だから」  章久は額を出させるのが気に入ったのか、直冬の髪を掻き上げ、その手で顔を固定するような真似をしてくる。もっと何か言えというように、真上から唇を軽くついばまれた。 「……もういいや」     
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