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「変なの。僕にプロポーズまでしたくせに。酔っ払って言ったのと、こないだ言ったので二回も」
「違う。あんな、できもしない口だけのプロポーズなんかじゃなくて、そんなんじゃなくて」
一生懸命言いながらそこでようやく顔を上げた宗司が、こちらを見下ろしてくる。
涙でぐしょぐしょになってしまった顔。ただの友達だったころから何年も一緒にいるけれど、そんな顔は初めて見る。
子供よりも子供みたいに頼りない顔。
「…あーあ、そんなんなっちゃって。王子様が台無しだよ」
いとおしくなって笑ってしまいながら濡れた頬を撫でてやると、宗司はふるふると首を振った。
「王子様じゃないよ。こんなに身勝手で意気地のない王子がどこにいるんだよ。…好きなんだ、間宮。好きなんだよ。好きなんだ。ほんとにこんなに好きなのに……なのに、自分の事ばっかり大事でごめん」
そこまで言うとまた薄茶色の瞳からぼろぼろと涙をこぼしてしまって、ぎゅうっとしがみついてくる。
「なんでずっとそばにいてほしいとか、そういう事が言えないんだろう」
声は震えている。慰めるつもりでその背中に手を当てると、宗司は尚も続けた。
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