プロローグ

1/30
77人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ

プロローグ

 午後二時二十一分。  幼い少女は息を潜め、駅の構内に設置されたゴミ箱の影に隠れた。  構内の隅、人目につきそうもないゴミ箱の影。  彼女は荒い息を無理矢理抑えようと両手で口元を塞いだ。  血管の波打つ音が耳の中に響いて痛い。  柔らかなフリルがついた白いスカートの裾を汚れた床に擦りつつ、彼女はその場を動かなかった。 「残念だったねー」  不意に聞えてきたのはヒールの音と女性の声。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!