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 クラスメイトの話では、彼はトイレに行ったまま、三十分以上戻って来ないという。なんだかんだと言って面倒見のよい西本皓(にしもと こう)は、クラスメイトに頼まれて「彼」の様子を見に行くところだった。  闇に紛れた海は、普段の薄汚さが嘘のようにキラキラして静かで、優しい風がアルコールで火照った皓の身体を心地良く包む。さっき皓が歩いてきた散歩道は、木々の緑が砂とコンクリートばかりの場所に色を添えている。  そんな鳴井浜は大騒ぎしても咎められない、今時では珍しい場所だ。しかも高校からも割と近くて、高校生が溜まるのには持ってこいだ。加えて夜は人目に付きにくいので、皓も何度か女の子といちゃついたことがあった。もっとも、その都度、相手は違っていたが。 「何がウェルカムパーティーだ、あの馬鹿っ……」     
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