1.ぎゅっとポトフ

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 十二月。  晩秋から吹き始めた木枯らしも、だんだんと本格的な冷たさと強さを増してくる。美杜町がある仙台の中心部は、それほど雪は積もらないんだけど、とにかく風が強い。それだけに体感気温もぐっと低くなるから、冷え性の私にはツラい季節だ。 「うぅ~寒い寒い寒い!」  風の音でいつもより早く目が覚めてしまい、二階のリビングダイニングへ忍者並みの速さで下りて行くと、ドアを開けた途端、むっちゃんの「えーっ」という不服そうな声が上がった。 「イヤだよ、俺。婚活イベントなんて」 「そんなこと言わないで。参加するだけでいいんだよ。ほんの数時間いてくれれば。ね?」  食卓で向かい合うお父さんとむっちゃんの間には、A4サイズのチラシが一枚上がっている。  おっ、なになに? 婚活イベント?  イベントといえば、この桜木まどかを忘れてもらっちゃあ、困る。ハロウィンの時だって、気合いを入れてメイドさんのコスプレして仕事したんですよ!
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