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「子ども扱いしないで!」
予想もしなかったツェツイの行動に、イェンは驚いたのかわずかに眉を上げた。
「……ずっと女の人と一緒だったんでしょう。あたしの修行よりも、その女性と一緒にいたほうがいいんでしょ!」
足下が震えて立っていられない。
こんなこと言うつもりなどなかったと、言ってしまって後悔するが、取り消すことはもうできない。
「ごめんな」
ツェツイは不安げに瞳を揺らして視線を上げたが、すぐにそらしてしまう。目の前に立つお師匠様の胸元が目に飛び込んできたからだ。
「どうせ……」
ツェツイは寝間着の裾をぎゅっと握りしめた。
「どうせ、あたしには何もできないもの。どんなに頑張って修行しても魔術なんて使えない。時間のむだだから、才能がないから、お師匠様はあたしに嫌気がさしたんでしょ。だから、あたしのことなんか放って、どこかに行ってしまったんでしょ!」
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