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あたし、何言ってるの……。
ややあって頭の上で深いため息を聞くのを耳にする。
その重いため息が、さらにツェツイの胸を深く抉った。
「修行なんかもうやらない! 魔道士になんてならない! こんな花ももういらない……お師匠様なんか……大っ嫌い!」
手渡されたすみれの花を床に叩きつけようと手を振り上げた。が、その手がそのまま頭の上で止まる。
ツェツイは小さな肩を震わせた。
言葉もなく目を細めるイェンに顔を引きつらせる。
目に涙が浮かんだ。
何も言ってくれない。
ひどいことを言ったのに、怒ってもくれない。
ため息をつかれてしまった。
唇を引き結び、ツェツイはイェンに背を向け家を飛び出した。
再び訪れる静寂。
その時。
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