407人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
二年前のあの日、ルネが一人、悄然とうなだれて学院の外れに向かうから、どうしたのだろうと思ってあとを尾けたのだ。すると彼は荒れ果てた廃園にある池のほとりに座り込み、膝を抱えて泣き出し始めた。
ずきん、と胸が痛んだ。生真面目な優等生で、いつもはきはきと明るく皆を引っ張っていくルネが、たった一人で泣いている。
マルセルは木立ちの陰に隠れ、じっと幼馴染みを見守った。ルネは膝に額をくっつけ、細い肩を震わせていつ果てることなく涙を流していた。ルネがあんな泣き方をするなんてと、見ているだけで胸が詰まった。
もしかしてルネは声をかけて欲しくないと思っているかもしれないが、丸まった背中を見ていたら、何もせずにはいられなかった。ルネと一緒に遊ぶことはなくなってしまったが、彼はかつて一番仲が良かった幼馴染みで、苛められっ子のマルセルを今でも気にかけてくれる、唯一の友人だからだ。
マルセルは草を踏み、勇気を出して相手に近づいていく。
――ルネ。
なるべくそっと声をかけたのだが、ルネはやはり驚いた。赤くなった目でこちらを見上げ、うろたえた表情をする。
ルネは、この場でどう振る舞ったらいいのか分からないようだった。毅然と立ち上がろうにも、心を濡らす涙がまだ乾ききっていないのだろう。
「あっちへ行けよ」とは言われなかった。だからマルセルは、そっと横にかけてつぶやいた。
――泣いてもいいじゃない。悲しいことがあったんでしょ?
ルネは目を見張り、マルセルの顔を見つめた。その瞳がまた潤み、抱えた膝に再び沈められる。
ルネが泣きやむまで、マルセルは隣にいるつもりだった。いつも真っ直ぐで、人一倍頑張り屋のルネ。そんな彼でも、辛い涙に暮れることがあるんだろう。マルセルは泣き虫だから、溢れてくる涙がなかなか止められないことはよく知っている。だったら、止まるまで遠慮なく泣けばいいのだ。
――……マルセル。
お尻が痺れきった時、ルネはようやく顔を上げた。憂いが消えた、晴れやかな表情ですっきりと立ち上がり、マルセルの手を握って言った。
最初のコメントを投稿しよう!