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私は彼に口付けた。
でもその唇は動かない。
挟んでも、挟み返してくれない。
「………キス…嫌?」
見つめて問う。
すると彼に聞き返される。
「どんなキスをした?」
「………どんなキスって?」
「あの男と」
「………それって眞島さん? なんで今……まだ怒ってるの?」
「いや、興味があるだけだ。お前が他の男にどんなキスをして、どうやって触ったのか」
「そんなの……覚えてないよ」
「本当に忘れたか?」
全く覚えがないと言ったら嘘になる。
私は教わったやり方しか知らない。
ましてや相手によって使い分けたりなんか出来るわけない。
だから、
「………たぶん…いつもと同じ。桔平にしてる時と」
「じゃあ、やってみろよ。いつもみたいに」
「え……そんな、桔平に想像されながらなんて無理。それにそうゆームード全然ないし」
「なら、俺は何もしない。ただの添い寝だけだ」
背中にあった腕が離れた。
「………いじわる」
「何とでも言え」
布団の中に籠ったぬるい空気が、私を添い寝だけじゃ物足りなくしている。
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