終わりへの鐘

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冴子のことは気になったが、進一は敢えて興奮状態の母を優先した。母の言葉にもしかしたら、と疑念が浮かんだせいもある。 今にして思えば、母を宥めるというのは口実で、本音としては自分を落ち着かせる為だったのかも知れない。進一には冴子に対してどうしても強く出られない部分があった。 ーーここで激高したら、冴子に嫌われてしまう 冴子は結婚したとはいえ、まだまだ男達の注目を集めている。彼女がさえない自分に愛想を尽かして他の男に走る可能性は無きにしもあらず、だった。 進一の口元に皮肉な笑みが浮かんだ。 ーーまあ冴子の方は母が目の前から消えれば自分で部屋に戻るだろう     
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