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休みはすぐに終わってしまい、寒くなると布団の中でゴロゴロするのが至福の時だが、昼を過ぎると叩き起こされ渋々リビングに入る。
瑠里はすぐには起きないので、最終手段で王子達の攻撃を受けるだろうが、毎度なので素知らぬ顔で支度をしていた。
顔を洗ってボーッとコーヒーを飲んでいると、テレビは風来坊シリーズが中盤を迎えていた。
「確かに映像綺麗になったけど、またこれ?」
「それが終わったら陰陽師の話するよ、イケメンも沢山出てる」
「いや、普通にニュースとか見たいんだけど……」
天気予報か自分が見たい番組以外は、ずっと時代劇と海外ドラマを行ったり来たりするので腹立たしい。
部屋にテレビがあるのでそこで見ればいいが、勿体ないし仕事に行きたくなくなりそうで、ここで揉めてしまう。
むしろ母も部屋でみれるので、気を使って出勤前の娘にチャンネルを譲って欲しいが、そうはいかないのが我が家だ。
テーブルの上にはラップに包まれたおにぎりが置いてあり、仕事に行けと無言のプレッシャーをかけてくる。
休むなんて言おうものなら母が吠えるので、あえてここで支度をし背中を押す……というか蹴りを入れる存在が必要なのかもしれない。
仕事内容は常に命がけなので、バイト時の面倒だな……と思う気持ちとは別な気もする。
「はぁ……今日は朝から寒いし、仕事行きたくないなぁ」
「何言ってんの、もう夕方だし可愛い年寄りと愛するペットの為に稼がないと!」
やっと起きた瑠里は母と言い合いをしていたが、彼女にとってはバイトを休みたい感じと変わらないらしく顔が引きつった。
主役が台詞をいう少し前から、母と王子達はテレビの真ん前でスタンバイするので邪魔だが、気にもせずむしろドヤ顔だ。
「祭囃子に誘われて……」
「もういいよ、夢でもみた!なんで一番いいとこでいつも出てくんの」
歯を磨きながら瑠里が遮っても、きちんと最後まで言い切ってから王子達とテレビの前を離れる。
「お手と同じ感覚だよ、イナリ達も見てもらいたいって」
ノリに乗ってる王子達を見ると、確かにそう言ってるように見えるから不思議だ。
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