おせち料理

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「本当ですね。私もここでおせちが食べられるなんて思ってませんでした」 キッチンで準備するお料理を見ながら、小田さんがそう言います。 「お料理もそうなんだけどね、1月って睦月って言うだろう?みんなが仲睦まじく過ごす時期って意味なんだよ」 「へぇ、そうなんですか。何だか素敵ですね」 小田さんは目を丸くして言いました。 「ここは、そう言うのが強く感じられるような気がするよ。あぁ、美味しかった」 お雑煮のお椀をテーブルに置いて、「ふぅ」と息をつきます。 「はい、どうぞ」 葉子さんがお料理を小田さんの前に並べました。 私は、タツ子さんに新しく淹れたお茶をお出しします。 「私の店もそうだけど、ここは余計に人との繋がりを感じられるんじゃないかい?」 「えぇ。静かで何もないからこそ、お客様ひとりひとりとの関わりを深く感じることができます」 私がそう答えると、彼女は「あははっ。そうだろうねぇ」と笑いました。 「これおいしい!こんなお雑煮初めてです」 小田さんは、あご出汁のお雑煮、それも鰤の入ったものは初めてのようでした。 お節もおにぎりも食べたあと、お雑煮をお代わりしてくださいました。 「海老は長寿を願うというけど、本当にここのお料理を食べたら長生きできる気がするよ」 タツ子さんはそう言って、お茶を飲みました。
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