一年零組

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一年零組

いつも同じように繰り返される、色映えない日常。目覚ましと共に起き上がり、親の作った朝食を食べる。昨日のうちに準備を済ませた鞄を背負い家を出る。同じ時間に教室に入る。誰かと会話を交わす事なく、挨拶すらもなく、ただ自分の席で教科書とノートを広げ、教科書に羅列する文字を睨みながら問題を解いていく。それがこの教室では当たり前だった。 ここは一年零組。実際には九組だが、あまりにこの学校では異質なため、このクラスは零組と呼ばれている。その異質さ故に、教師を含め、この教室に足を踏み入れたがる者はほとんどいないだろう。何が異質かと言えば、このクラスは誰もが勉強にしか興味がないのだ。この学校は決して積極的な進学を謳う学校ではない。この教室にいる人間たちは、元々こんな学校に来るべき人間たちではなかったのだ。それが、それぞれの理由を持ち、この学校の生徒であることを甘んじている。 俺を含め、この教室にいる人間たちは、友情とか恋愛とか、この歳の人間が持つべきであろう感情は何もない。ただひたすら勉強をし続けた。中には級友の名前すら知らない人間もいるだろう。現に俺だって、半分の名前を言える自信はない。 そんな時、やつが来た。俺らのそんな色栄えない日常を変える存在。 「はじめまして!今日から臨時でこのクラスの担任になるぜ!」 山田花丸、それがそいつの名前だった。
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