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結局悠一さんが被害者の霊に質問してそれをイエスかノーで答えてもらう形式で話を進めた。
ぐぬ……英語もうちょい出来れば……
聞きたいことはあらかた聞けたのか頷いた悠一さんを見てアレックスさんが遺体の入った引き出しを元に戻す。
佇んでいた霊も再び姿を隠した。
「あ、……」
「恭弥、行くぞ」
「でも、」
言葉も通じない俺が、何か出来る訳でもないけど、このままじゃ、
「こいつの姿は俺には見えない」
部屋から出るのを躊躇う俺に悠一さんが声をかける。
「だからどんな顔して、どんな声をしてたのかは分からねぇ。お前にはどう見えた?」
俺には……
「……怖いとか、恨んでるとか、そういうのより……どこか自分と向き合ってるような、思い返してるような……そんなふうに、見えました」
あくまで俺の感覚ですけど……と悠一さんを見上げればポンポン、と頭をなでられる。
「そう思うならそれが正解だ。なにかに向き合ってるなら少しそっとしといてやればいい。何も明るい場所に連れていくことだけが救うことじゃない」
「そう、ですね」
生きてる人間だって、そっとしておいて欲しい時や1人になりたい時ってあるもんな……
それを無視して踏み込むのは、ただのエゴだ。
「恭弥」
いつの間にか悠一さんに手を引かれ建物の出口まで来ていて、刺すような日差しが瞼の裏を熱くさせる。
「……んな顔するな」
さらりと俺の前髪に触れた手がそのまま目尻を辿っていく。
「お前はそのままでいい」
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