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死神登場
誰もいないと思っていた暗闇からの声に、心底びっくりして、飛び上がってしまう。
「だ、誰?」
暗闇に溶け込むように、真っ黒な格好の背の高い男の人がひっそりと立っていた。
黒いスーツ、黒いシャツ、靴下も靴も黒。白い顔だけが闇の中でぼうっと浮き出ていて、唇だけが、妙に赤い。雨が降っているわけじゃないのに、黒い傘を一本、持っている。
・・・死神がいるとしたら、こんな感じかもしれない。
「死神です」
「えっ?」
私の心の声が聞こえた?
「別に、あなたの想念を読んでいるわけではありません。
ただ、初めて声を掛けると、大概の人は、私の格好を見て死神かと思うようなんです。
黒ずくめの格好をしているから、でしょうか。それとも体格が貧相だから、でしょうか」
男の人は、いでたちよりも数倍饒舌に、ぺらぺらと喋った。
「死神に、よく間違われるんですか」
「というか、すぐに正体を見破られるのも、つまらないな、と思いましてね。
今度は真っ赤なスーツでも着てみようかとも思うのですが、いかんせん、これが制服なんですよ」
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