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「東さんがね、里ケ谷のご実家に帰る用事があるんだって」
志織は、こっちが恥ずかしくなるくらいキラキラしている。
ま、それはそうだ。
来月末、桜が咲く頃 晴れて横山と結婚するんだから。
式や披露宴の準備も、お兄ちゃんという強力なアドバイザーがいるから殆ど無事終わり、当日に胸躍らせる 嫁入り前の一番輝く時期だ。
もちろん、志織の幸せそうな顔を見るのは嬉しいけど。
…僕は何だかボロボロで…
「東さん、和子さんから戻って来るように言われたみたい」
『ふーん…』
あの二人が長い年月や葛藤を越えて、関係が修復されたのは本当に良かった。
「どうしたの?あんた最近 元気ないじゃない」
『…そう?志織が元気過ぎるだけと違う?』
幸せ真っ盛りの大切な志織に、僕の屈折しかかった暗い心の内を知られるのは嫌だ。
「ね、三郎」
『ん?』
「私に話してないことがあるでしょ?」
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