プロローグ 七月二十九日

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プロローグ 七月二十九日

 ついていない、って思う日は平凡にただ生きてても、たまーに巡ってくるもので、俺にとって今日はその日だ、って数分前まで思ってた。  土曜の夜はいつもより疲労困憊だ。  チーフが出張でサブチーフの自分は開店から閉店までのシフト。ありがたいことに予約も切れなくて目も回る忙しさ。やっと取れたお昼の休憩は二十分。おまけに最後のお客様を見送ったあと、悪びれない後輩がこの後デートだ! というので、終業の清掃も同情で肩代わりして、ついでにアシスタントの子の自主練習にも付き合った。  後者は自業自得だとしても、さすがに朝の八時から暗くなるまで、立ちっぱなしはつらい。めっちゃつらい。  そして、ボロボロで電車を降りて、近道のつもりで河川公園の遊歩道を歩き出した時、ゲリラ豪雨に襲われた。先週、二週間悩みに悩んで清水ジャンプ的な覚悟で買ったマスターピースの下ろしたてのショルダーの中には、折り畳み傘は入っていなかった。ちなみに今日はいてる白の麻素材のエスパドリーユは一番のお気に入りだし、どうしていつも通りスポーツサンダル履いてこなかったんだろうって我ながら間の悪さにびっくりする。     
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