可能性の愛

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その後少女がどこへ行ったかは誰も知らない。自殺したのではという噂が流れたが、部屋には遺書も置いてなかったので、確かな証拠はない。 それはさておき、この話から学ぶものは何か。恋愛術でもなさそうだし、同性愛に対する賛同でもなさそうだ。 では一体何なのだろうか。 私はそれが「自由」と言う名の終わりなき平野であると解釈する。 我々は自由を求めるあまり、指針を失ってしまっているのだ。 終わりの見えないゴールほど、辛く苦しいものはない。主人公の彼女が抱いていた思いもそうであろう。一人だとわからないから、全てを憶測で判断する。そして自分自身で自分を閉じ込める独房を作り上げ、そこから抜け出せなくなる。 でもその檻を破るのは、簡単なことである。 一人ではできない。二人ならできる。 人間一人で生きていかないからこそ、他人に頼るのである。 もちろん他人の指針に合わせたら自分の自由がなくなってしまう。 しかしそれは同時に、自分の「可能性」という希望を大きくする。 手を取り合い、同じ方向を向き、そして同じ歩幅で歩む。 人の気持ちはわからないし、ましてや自分の気持ちだってあやふやである。 でもだからこそ我々は進まなくてはならない。 たとえそれが暗く冷たい、無限に続く「平野」であっても、信じなくてはいけない。 人を、夢を、そして可能性を。 夢の叶え方、それは信じることである。 絶望広がる平野に、希望の「朝日」が登ることを。そして、その平野に「終わり」があることを。 たとえそれが、「幻想」であろうとも、彼女のように信じなければならないのである。
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