殺意

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<智哉 side> -ライブ会場 工「ほら、食え」 俺は工藤からコンビニのおにぎりをもらっていた。 智「ありがとうございます」 俺はおにぎりを一口食べた。 智「…あの、ひとつ聞きたいんですけど」 工「なんだ」 智「どうしてこんなことしてるんですか?」 俺は工藤に質問した。 この人たちなら、ある程度のことは答えてくれると思ったからだ。 工「もちろん金のためさ」 智「…そんな人たちが50億円燃やすわけないですよね」 工「…」 工藤は黙った。 工「俺の父親は、木崎ファイナンスに勤めてた」 工藤は語りだした。 工「書類の文字にミスがあった。それだけの理由で会社をクビになった。それからは大変だった。毎日毎日就職セミナーに通って、面接して。けどなかなか雇ってくれるところはなかった。そりゃそうだ。木崎昭蔵が裏で手を回してたんだからな」 智「どうして父はそんなことを」 工「さぁな。よっぽど気に入らなかったんだろうな。俺が家に帰ると親父はクビを吊ってた。それからお袋は体調を崩してそのまま死んだ。他のやつらも似たような目に遭ってる」 俺は言葉を失った。 父がたくさんの人間をクビにしたことは何となくわかっていた。 けど、ここまでひどいとは思っていなかった。 智「…ひとつ、お願いがあります」 俺は工藤に言った。 智「父に電話をさせてください」 工「なに?」 智「別に助けを求めるとかじゃありません。父にどうしても言っておきたいことがあります」 智哉は真剣な眼差しで工藤に頼んだ。 工「…いいだろう。ただ、妙なこと言ったらすぐに殺すからな」 智「分かりました」 俺は覚悟を決めた。 父がバレていないだろうと思っている秘密。 家族が崩壊するかもしれない秘密。 それを打ち明ける決意を。
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