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 初めて海に来た時は一夏との事件があった時だ。あまり思い出したくはなかったけれど、自分を探し出してまで渡したかったものなのなら余程見て欲しかったのだろう。  遠慮がちにそれを受け取ると、ホッと息を吐いて笑顔になるキリ。 「俺は、今も変わらない。会いに来るの、正直悩んだけど……また振られたら今度こそ立ち直れないと思ったからさ」 「ふ……振ってなんかっ……」 「同じようなもんだよ、違う?」  苦笑したキリに湊は何も言い返せなかった。  振ったつもりはないけれど、目の前から去ったのだから同じだ。  今もまだこんなに好きなのに。この気持ちを抱えたまま一人で生きて行こうと思っていたのに、こうやって言葉を交わして目と目を合わせてしまうと今すぐ抱き着きたくなる。  もう誰も、何も、二人を邪魔する柵はないのに。  どうしても怖くなる。この人を独り占めする事が。
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