プロローグ~最悪の誕生日~

2/5
699人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
 都下にあるその広い公園は、一日遊ぶには充分過ぎるほどの広さで、四季の花々を楽しんだり、芝の上で遊んだり、アスレチックがあったりと都民の憩いの場だ。  駐車場も広く、様々な所から来るが大体が都内に住む人間が遊びに来ていた。 「ここでいいかしら?」 「いいよ。今日はここでピクニックね!」 「凜乃の好きなもの、沢山お弁当に入れてきたから」 「うん、ありがとう!」  凜乃は母親の真美子に向かって言った。  今日は凜乃の五歳の誕生日で、母親とふたり、日ごろの忙しい日々を忘れようとピクニックに来ていた。  凜乃が父親がいないと理解出来たのは三歳くらいだろうか。  公園に来る度に真美子と二人きりだということに、自分は周りとは違うんだとジワジワと思い知らされた。  でも、もしかしたら勘違いかもしれないと黙って生活を送り、真美子に問うこともなかった。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!