三国志島介の志編(180年代

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 正直説明されても意味はすっかり頭に残ってないぞ、何かのスローガンだったって位しか。 「装備は雑多、統率は取れていませんが、数が多いです。周辺の民家に押し入っては略奪を行っているようです」 「城はまだ落ちそうにないわけか。では今日はここで休んで、明日朝仕掛けることにするか」 「すぐに駆けつけないのですか?」  それでも構わないが、心に衝撃を与える必要があるからな。一番有効なのは安心している時に突然、というものだ。 「疲れた兵の背を押しても、決して良い結果をもたらすことはない。今夜は多めにメシを振る舞い、携行用の炊事も済ませた後に進む。設営は千人長らに任せて様子を見に行く、張遼案内しろ」 「御意!」  文聘を引き連れて三人で新南城の見える小高い丘へ進んだ。西側に山の裾野があり、北にもなだらかではあるが傾斜がついた場所、南と東は平地で空堀になっている。城壁の高さは五メートルあるかないか、低い部類だぞ。それでも多数に押されても落ちないのは、単純に黄巾賊の攻め方が素人だからだ。  包囲をしているのもただ囲んでいるだけ、圧迫はあるがそれでどうこうするつもりはなさそうだ。張なんとやらはどこにいるんだ? 「敵の主将はどこだ」 「恐らくはあの大幕でしょう」  集団の真ん中、安全地帯で城からの攻撃も届かない後方に位置している。こいつらは城を落としたら荒すだけ荒して逃げていくんだろうなきっと。 「ああいった手合いは、攻められるとあっさりと崩れるものだ。何故なら、奪うことは良くても守ることは意識のそとだからだ。自身が何を背負って戦っているか、そこに決定的な差がある。戻るぞ」
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