1523人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
「日和」
「え、ぇと……その、実は」
じっと自分を見つめてくる瞳に勝てた試しは一度もない。観念して、日和はぼそぼそと白状した。
ことの起こりは、二週間ほど前にさかのぼる。原因は羽山だ。というか、ここ最近の真木とのあいだに諍い(と思ってるのは日和だけかもしれないが)が生じた原因の八割は羽山だと思っているのだが、それはさておいて。
「だって、羽山さんが」
「和が? またかよ」
「またかよって思うなら、あの人にも注意してくださいよ!」
「なんで?」
「なんでって、いや、だって、その」
「俺よりおまえのほうが顔合わす日多いだろ、もはや」
だからおまえがなんとかしろと匙を投げられているのか、感化されやすい日和に問題があると見なしているのか。あるいは、日和にもそのくらいできると信じているのか。
……最後の案にしとこうかな、俺のために。
「それで、和がどうしたって?」
「だから羽山さんが、いつまでおまえは『真木さん』って呼ぶつもりなんだって言うから」
「で?」
「……だから、その、ちょっと気になったっていうか」
もっと散々にからかわれたわけだが、主旨はそれである。
「それだけ?」
その声は完全に呆れていたし、なんだったらちょっと引いていた。おまえマジか、みたいな。ひどすぎる。
最初のコメントを投稿しよう!