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「ち、違う!あの、さ・・・・・・・・・橘、好きな色って何?」
『は?なんで?』
「いやその、仕事の帰りに食器とか歯ブラシとか買おう、と思って・・・
だって、これからずっと・・・・・・い、一緒に住むんだから」
勇気を出して提案する。
すると、しばらく間があってから、
『・・・黒、グレー』
と、小さな声で返事が返ってきた。
「あ、ありがとう」
『・・・まだ頭、痛ぇんだろ。無理すんな』
照れたように言うと、橘は電話を切ってしまった。
でも、その言葉が逆に、
俺を動かすエネルギーとなった。
「あ、瀬戸先生」
帰ろうとすると、園長先生に呼び止められた。
「はい」
「来週の話なんですが、業者の方がいらっしゃって遊具の塗装をするそうですので」
「わかりました」
特に自分には関係のない話かな、と思っていると、
園長先生が俺をじっと見つめていた。
「・・・あの、なにか?」
「いえね、瀬戸先生があまりにも嬉しそうなので気になっちゃって。デートの約束でもあるのかしら」
「ありませんよ。これから家に帰るだけです」
「そう?じゃあ家に帰るのが楽しみなのね。いい人でも待っているのかしら」
「え、え?えーっと・・・」
気の利いた返しができればよかったんだけど、
園長先生の言うことがあまりにもっともで、口ごもってしまった。
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