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水に流れる花びらは
やがて色褪せ水底へ
けれど小さくキラキラと光りの粒が花びらを光らせるのでした
『ああ…俺はお前に逢いたいよ』
光はキラキラ涙を流します
『ああ…だけど逢う事は叶わぬよ』
宵闇は鬼になる程に
許されざる罪を侵し過ぎました
鬼になれば
人の魂に取り憑く事はできても
輪廻の輪に乗る事は難しいのでした
嘆き嘆いてキラキラと…
水面を見れば
水を掬って口に運ぶ旅の途中の身重の女の姿が…
身重の女はキラキラ光る花びらを掬って見ましたが
何のこともないただの花びらだと…
懐から懐紙を出して拭き取ると旅の脚を進めたのでした
鬼は身重の女の腹の中の子供に取り憑いたのでした
喩え
魂の欠片になろうとも
生きている者の中にあれば
万が一にも
愛しい桜の精に逢えるかも知れない
ですがそれは
逢えない者から理不尽に祟られた宵待ち桜にも…
鬼となり
多くの罪を侵した宵闇にも…
…許されないと…
千年を越える歳月は
瞬く間に過ぎて行ったのでした
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