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床に寂しく転がっている伊達メガネが視界に入る。
そう。僕は自信がない。
ジンと離れて生きていける自信が。
いつの間にこんなに溺れていたんだ。
溺れすぎた結果、水槽まで移し変えられようとしている。
それがこんなに心地良いなんて。
まぶたが重い。
開けたいのか開けたくないのか、歩自身わからない。
構うもんか。
どうせ溺れるなら、このまま頭からがぶりとやってくれ。
身も心も、魂までもくれてやる。
そうすればずっと一緒だ。
「眠っていいぞ。店は俺が閉めるから」
果てた後の余韻の中、優しい声に包まれ、歩は意識を飛ばした。
完
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