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手を振るリプリーに応えるように、イヴンもそっと手を振り返した。
「リプリーがヴルカーンベルクの王女様だったなんて」
「気づかないおまえも鈍すぎだ。まあ、はたからおまえらのやりとりを見てて面白かったけどな」
「教えてくれたっていいじゃないか! 僕ずっと悩んで……」
頬を膨らますイヴンのおでこを、イェンはぴんとはじく。
「痛いよ」
「考えてもみろ、あのりんご女はともかく、あんな色白の旅人なんているか? 何が旅の占い師だ。どう見たってつい最近まで部屋の奥深くで大事に育てられてましたってのがバレバレだろ? そもそも〝灯〟の証を持つ者が〝灯〟を離れるなんて許されねえんだよ」
でもまあ、とイェンは肩をすくめた。
「気づかねえのも無理ねえな。女の子は成長するとがらりと変わるからね」
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