藁の家

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家族を失った私にとって、家族以上に大事だと思える人ができた。 その日、私は初めて真壁さんの事を真壁先生と呼んだ。 出なかった声が、出るようになった瞬間......。 そして私のドクターであると認めた証。 家族はまだ必要ない。 アイツの死刑が執行されるまで、私の身の安全も周囲の人の身の安全も保障できない。 できるだけ大切な人は少ない方がいい。 私はボーダーラインを引く意味でも、真壁先生と呼ぶことを決めた。 「真壁先生」 私が呼ぶたび、真壁先生は照れくさそうに笑って......涙を流した。 それから、私のデザインしたアクセサリーは『シンプルで学校に着けていっても目立たない』という理由から、アクセサリーショップ『berry』でも人気ベスト10に入る売り上げをたたき出した。 それと同時にネットショップの仕事を辞めた。 3つの仕事をこなすのはさすがに無理だと思った。
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