一か月ぶりの逢瀬

4/19
2024人が本棚に入れています
本棚に追加
/299ページ
五十嵐を自室に通そうとしたとき、いきなり思い出した。部屋の四か所に貼った写真のことを。  ――剥がしてないじゃん。 「和真、ちょっと待ってて。部屋散らかっててさ」  適当な言い訳をして、尚人はひとりで部屋に入ってドアを閉めた。猛スピードで、ドア、姿見の横、ベッド側の壁、と写真を剥がしていく。最後の、机の前の写真に手を伸ばしたところで、ドアを開ける音がした。 「なお? 部屋、綺麗じゃん」  尚人は最後の一枚をむしり取って、四枚の紙を後ろ手に持って隠した。バレちゃまずい。平静を装って、「ちょっと机の上がぐちゃぐちゃで」と言い訳をした。 「めちゃくちゃ怪しいんだけど。なに隠したんだよ?」 「大したもんじゃないって」  詰め寄って来る五十嵐から離れようと、後ずさる。 「じゃあ見せろよ。渡瀬からもらったサイン?」 「は? ぜんぜん違うって」  尚人の手が緩んだ隙に、五十嵐が四枚の紙を奪い取った。 「あー見るなって!」  尚人の制止を振り切って、五十嵐が一枚一枚に目を通す。ペラペラと紙の動く音がした。     
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!