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第1章 モヤモヤ
「何かがおかしい、頭の中にモヤモヤが巣食うっている、数学で理解できないロジックに遭遇した気分だ」
瀬下は、ベッドで上体を起こし黙考していた。
点けっぱなしのテレビの音が煩わしく感じた。
しつこくDVD操作指示をループしている。
昨晩、週末と言う事で、多量に借りていた。
ベッドから起き上がり、
床のリモコンを拾い、
メイキングを指示し、
ベッドに腰を落とした。
「はぃ、監督の・・・・」と、白人の中年男が、ダラダラとお喋りを始めた。
時折、俳優とスタッフのじゃれ合いが割り込んでくる。
本編で敵対した宇宙人と人間が肩を並べて記念写真を撮っている。
宇宙人メイクの俳優が顔にサプライズ・バースデイケーキをぶつけられた。
ケーキの残骸が、ふわふわとちゅうを舞を舞っている。
『シェービングクリームで作った似非であろうが、食べ物で遊ぶのは飽食の果だ。
何故、こんなにも不快に感じるのか、たかが映画の遊び事に?』と瀬下は思った。
カーテンが入日に染まっている。
疾うに昼は、過ぎていた。
延滞料を取られると気分が悪い、まだ見ていない作品もあるが、早々に返却することにした。
床に散在しているDVDを掻き集めて気づいた。
全部B級SFである。
多少酒が入っていた所為なのか、似たような作品ばかりを借りている。
敵対している者同士が戦っていくうちに解り合い、友情が生まれるパターンだ。
『SF映画まで教育的指導か』興醒めである。
瀬下は、自己矛盾に気付いていた。
『映画に食を粗末にしない倫理観を要求しながら、一方で激しい殺戮や破壊を容認する』
それが瀬下を更に不快にし、モヤモヤが酷くなるのを感じた。
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