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「深見、帰るぞ」
「……え、あ……うん」
「んー? なに捨てられた子犬みてーな顔してんだ?」
「っ、そんな顔してないし!」
「そぉかぁ?」
小馬鹿にしたような訊き方にムッとする。
「そんなに気になるか? アイカちゃんに何言われたか。なんて答えたか」
「……気にならない」
反発するように答えて、椹木さんに背を向ける。
「…………でもない」
思わず付け足してしまった言葉に、またもや椹木さんが「ぶはっ」と噴き出す。
「あーあ。あんな可愛くて気立ていい子の申し出を断っちまうなんて、勿体ないことしちまったかな」
「えっ」
反射的に振り向いて反応してしまった俺に、椹木さんは俺の行動を読んでいたのか、笑みを深くして俺の頭をポンと撫でた。
「だけどしゃーねーよな。俺はお前の方が可愛く見えちまうんだから」
「…………え」
一瞬、何を言われたのかわからなくて、だけど一気に顔が熱くなる。心臓がバクっと音を立てる。
「はは、真っ赤。暗くてもわかる」
椹木さんはそう言って俺の頬をつついた。
「とりあえず帰るか?」
「……う……」
動揺と緊張でうまく答えられない俺の腕を取って、椹木さんは歩き出した。
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