11 最終章

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「オレも同感だ」 「ところで所長。もう一つ質問ですが、どうして警察署内部の情報なんて手に入ったんですか?失踪届け云々って言ってましたよね?」 「……昔、警視やってた時期があるからな。その頃のツテだよ」 「!」  初耳に驚く佐々木に、綾瀬は憮然と答える。 「オレの黒歴史だ。忘れろ」 「――意外でした」  本当に、意外だ。  この男には、まだまだ謎がありそうだ。 (まぁ、それはオレもだけど?)  佐々木はほくそ笑み、淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ。  そして、それをとびきりの笑顔で綾瀬へ渡す。 「はーい、所長!コーヒーが入りましたよ」 「おお、サンキュー」  渡されたカップを受け取り、綾瀬は何気なく一口飲み干す。 ――ブッ!! 「お前、これっ!」 「知らないんですか?シナモンは、ガン予防の効果があるんですよ?アメリカのアリゾナ大で研究報告されてます。シナモンに含まれるシンナムアルデヒドの作用だそうです」  大量に投入したシナモンの効果を説明し、佐々木は悪戯っ子のように笑った。 「お前なぁ~…」  それを見遣り、綾瀬は嘆息する。 「オレは、子供の頃からアップルパイもシナモン抜き派なんだが?」  これに、佐々木はすかさず言い返す。 「それは、もう卒業してください。所長は立派な大人なんですから」 「…はいはい」  そう言うと、綾瀬は残ったコーヒーに渋々口をつけながら、チラリと佐々木に視線を投げる。 「――頼むから、次からはちょこっとだけにしてくれよ?」
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