325人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
「オレも同感だ」
「ところで所長。もう一つ質問ですが、どうして警察署内部の情報なんて手に入ったんですか?失踪届け云々って言ってましたよね?」
「……昔、警視やってた時期があるからな。その頃のツテだよ」
「!」
初耳に驚く佐々木に、綾瀬は憮然と答える。
「オレの黒歴史だ。忘れろ」
「――意外でした」
本当に、意外だ。
この男には、まだまだ謎がありそうだ。
(まぁ、それはオレもだけど?)
佐々木はほくそ笑み、淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ。
そして、それをとびきりの笑顔で綾瀬へ渡す。
「はーい、所長!コーヒーが入りましたよ」
「おお、サンキュー」
渡されたカップを受け取り、綾瀬は何気なく一口飲み干す。
――ブッ!!
「お前、これっ!」
「知らないんですか?シナモンは、ガン予防の効果があるんですよ?アメリカのアリゾナ大で研究報告されてます。シナモンに含まれるシンナムアルデヒドの作用だそうです」
大量に投入したシナモンの効果を説明し、佐々木は悪戯っ子のように笑った。
「お前なぁ~…」
それを見遣り、綾瀬は嘆息する。
「オレは、子供の頃からアップルパイもシナモン抜き派なんだが?」
これに、佐々木はすかさず言い返す。
「それは、もう卒業してください。所長は立派な大人なんですから」
「…はいはい」
そう言うと、綾瀬は残ったコーヒーに渋々口をつけながら、チラリと佐々木に視線を投げる。
「――頼むから、次からはちょこっとだけにしてくれよ?」
最初のコメントを投稿しよう!