ヴェルフ・アロウ

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 レネオラはまじかよという表情を見せた。ふっ、まじだ。それは何にせ魂の剣を壊す魂の剣だからな。その為だけに作られた剣だからな。 「……ハハハッ!」レネオラは笑う。「レネも終わりだな! 俺がいて、そいつまでもが継承しているからな」 「終わりではありません」始まりですとでも言うのだろうか。「言ったでしょう、お兄様。これは私が作ったのではありません」  レネメスは今度は、レネオラに剣を向けた。「過去のレネに作っていただきました! 過去のレネは、未来を思っていました! その未来のためにも私は……!」  あなたを! そう言ってレネメスは大きく剣を振りかぶって下ろす。その剣はレネオラから盛大に外れた、頓珍漢な場へと振り下ろされていた。ソフィンもシェリーもなんともリアクションし難いような表情でその剣の先を見ていた。私も多分そんな感じだろう。レネオラでさえもそんな感じなのだから。 「………俺をおちょくっているのか」 「ちっ違います…! 私、私がヘタクソなだけです……」 「こういうことを想定したんなら稽古を進めておくべきだったな」 「……はい」  その光景は完全にもう愉快な兄妹。なんてこった、お前普通にいい奴かよ。 「…ふぅ」  レネオラは静かにソフィンの方を見た。「罪悪感とかもあるのだろう。おい、剣」レネオラは剣に問いかけた。 「俺を殺す気はあるか」  剣は勿論だと言うように輝きを発する。レネメスはそれを見て、剣を隠すように覆いかぶさる。 「無駄だ。それにその魂、なかなか意思が強いようだな。尊重してやれ」  それはレネメスに向けたのではなく、後方にいるソフィンに向けたものであった。「俺の中でそれなりの勇気の勇者として讃えられるぞ」  レネメスがやめてくださいとでも言いたげな目をソフィンに向けた。ソフィンは戸惑いを見せるが、レネメスにゆっくり近付いた。 「いや……やめて…」 「レネメス様」レイアーが無駄だというふうに言った。「レネのためです」 「レネのためなら私のためも思ってよ!」  レネメスがキレた。
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