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治夫は夢をみていた。
左手に金づちをもち、右手にはノミをもったオンナ、
頭には火をつけた蝋燭を白いゴムバンドでしめ、長い黒髪をたらした女性が
白い和服を着ているにもかかわらず、凄い速さで追いかけてきている。
治夫も懸命に走っているが、おいつかれそうだ。
「あ~捕まる」と思った瞬間に起きた。
全身汗だくだ。
外は明るい、昼食後に自分の部屋にもどって眠気をかんじたので
軽く昼寝をしようかと考えていたら、あんなに怖い夢をみてしまった。
一階の風呂場でシヤワーでも浴びようと考え、シャワーを浴びて
少し濡れた頭をゴシゴシとタオルで拭きながらテレビのチャンネルをつけた。
テレビでは今日、起きた突飛なニュースを報道していた。
何でも二十四歳のエリート官僚が通勤電車で前に座っていた若い女性の手をとり、立たせた挙句、「ダンスをしませんか」といいながら、いきなり抱きついて唇を奪ったということが話題になっていた。
朝のワイドショーで教育評論家と自称する男が「昨今、はやっている美少女ゲームの影響でしょうか」
「現実と幻想が区別がつかないんでしょう。教育での情緒教育の充実が必要です」
と述べているのを治夫は学校創立記念日で家にいるときにみた。
治夫は、「あんなことするか、ふつう」と独り言が思わずでた。
治夫はお姉さんがほしかった。
綺麗なお姉さんが・・・・・
お母さんはいるが、 仕事のためアメリカにずっといる。
だから、治夫の家では、お父さんと一つ学年が上の兄と二つ学年が下の弟、計四人の男が住んでいた。
自分を含めて三人とも中学校や高校と違うこともあったが、運動部に入っていた。
治夫は都内にある早慶大学の付属中高一貫高校の男子校に通っていて、アメリカンフットボール部に入っていた。
身長もグングン伸びて、180センチメートルを超えていた。
家には、女性はいない。
中学高校と電車通学をしていた。
大きな体とはうらはらにある女生徒へのひそめた「恋」があった。
その女生徒決まった時間と決まった場所で乗り降りするので、治夫はワザと後ろに立ち、ほど良く見えるベストポジションを確保するのが朝のお務めだった。
わずか数十分の間だが、至福の喜びを味わいながら、スマフォをいじり音楽を聞くフリをしてチラチラと良くみていた。
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