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旅立ち
会社をクビになった。
何の事はない。ただの蜥蜴の尻尾切りだ。
40を前にして、15年も勤めた会社からクビになると、もっとダメージを喰らうものと思っていたのだが、案外大したことは無い。
まぁ、明らかに俺のせいでは無かったし、大事な取引先への体裁上、誰かが責任を取らないと…と、辞めさせられただけだからな…
形式上ではクビだが、退職金は上乗せして貰ったし、天下りで再就職先も紹介して貰ったからかも知れないが…
とは言え、再就職先も急な人事の為、受け入れには1ヶ月程欲しいとか言われ…時間だけが余った形だ。
季節は7月の終わり…学生達は、丁度夏休みを迎える時期だ。
さ~て…1ヶ月、何をして過ごすか…そんな事を考えていた時だった。
近所の公園を散歩していてると、1人の少年が自転車に大荷物を積んで、何やら座り込んでいた。
夏の陽射しの中、カチャカチャと油まみれになりながら、自転車を弄っている。
どうやら、マシントラブルらしい。
どうせ暇だし…と…
『どうしたんだい?チェーンでも外れたのかい?』
背後から近付き、そう声を掛けてみた。
少年はすぐに俺の言葉に反応し、こちらを振り向いた。
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