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はっちゃんがゆく
あの頃は夢だった。
何もかもがうまくいった。そして、それが一生続くものと思っていた。
オレは鈴木八郎という。あの野球選手のイチローと名前が似ているが、オレの方がずっと有名だった。オレは超売れっ子のお笑い芸人だった。
一番儲かっていた時は、月収三千万円。
使い方もすごくて、月五百万円は平気で使っていた。
近付いてくる人間の誰も彼もに、奢りまくった。泳ぎに行くとなるとハワイかグアム、焼き肉が食べたいとなると韓国、と、国内外問わず、みんなを引き連れて豪遊していた。
しかし、ブームは二年で去った。
それまでオレの近くで騒いでいた人間たちは、みんないなくなってしまった。
月収は一気に五万にまで減り、やがて一銭もなくなった。
ようするに、オレは、いわゆる一発屋だったわけだ。
現在四十歳になるオレには家族もいた。ヨウコという名の妻と、三人の子供たちだ。妻はオレが人気のあった時から転落してもなお、よく支えてくれた。三人の子供たちも、オレのブレイク中はクラスの人気者だったが、落ちぶれてからは、いじめられるようになった。そういうこともあって、子供たちはオレを恥じ、嫌った。
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