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そんな時、糖尿病性腎症で長らく続いた入院の末、死んでいった親父に続き、おふくろが心臓発作で急死した。
親父への勧誘を成功させたほど、熱心なクリスチャンだったおふくろを想って、オレは実家のある山口に帰ったとき、有名なザビエル記念聖堂まで約三十キロの道のりを足を使って走り、そこの記念公園のベンチで一夜を明かした。
その時、おかしくなった。
どうおかしくなったのかは覚えていない。覚えているのは、明くる日、どこかで見つけた適当な女を捕まえて、大声で話し続けていたところ、警察に捕まり、こいつはどうもおかしいということで、精神科病院に連れて行かれたことだ。
病名は、双極性障害(躁鬱病)だった。
入院してからも、おかしさは続いたらしい。自分では分からなかったが。
医師や看護師に対して、昔の栄光が忘れられないままのオレが噴き出してきて、何か言われるたびに、
「オレを誰だと思ってるんだ」
と怒鳴っていた。
そういうことを繰り返していると、保護室に入れられた。
「出せ オレを誰だと思ってるんだー」
と叫び続けたが、誰にも見向きもされなかった。
すっかりクスリ漬けにされ、次第に落ち着いてきたオレは、三か月後、保護室からようやく出られた。
そんなとき、病院から連絡を受けたのか、ようやく妻が会いに来た。
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