2 perplex

2/37
447人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
 弟のように可愛がっていた立冬に、女みたいに俺が夏生に抱かれたと知られてるかも……なんて (耐え難い……。ああ、切腹でもしたい)  昔、侍が「士道不覚悟」って切腹したよな。あんな気分だ。  これまで俺が「紅」だのなんだのとからかわれても、「男」として守ってきた矜持を、この俺自身が貶めてしまった。  それで、俺はかなりへこんでいた。  翌日、運良くか悪くか、俺は立冬にばったり会った。  いつもは夏生と行くんだが、さすがに昨日の今日。顔を合わせにくい。こっそり一本先の電車に乗ってしまおうと、少し早めの時間に出たら、ばったりと玄関先で立冬と会ってしまった。  同じ大学、同じ駅への道。 (立冬らしいな。講義に余裕持って、少し早めに出る所みたいだな)  俺は思ったけど、この間の悪さは何とも言い難い。 「……」  何も喋らずに行くのも変だ。 (昨日の声を聞かれたかも……。)  とは思いつつも、意識するのも変だと考え、俺はいつものように 「おはよう、立冬」  平静装い、声をかけた。  すると立冬が 「……おはよう」  と答えた。  ちょっとの間が気になったが、元々立冬は言葉が重い。すぐには返事をしないってのは分かっていた。  一八三㎝の高身長に、夏生によく似た整った顔。     
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!