川又 玄一

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川又 玄一

私と男は山を下っていく。 行きと違い、急な崖や川などは無くすんなりと降りていく。 「まさかお尻付きに操られていたとは…」 「お尻付き?」 「あの女の事だ。 お尻付きは、尻蔵様の化身。 直接取り憑かれたものだ。」 えっ。 という事は。 「どうした?」 私は足を止め、神社に引き返そうとするも、男が私の手を離さない。 「行かなきゃ。草子を助けに。」 「ならぬ!あやつはもはや化身。 そこらにいるやつらとはわけがちがうのだ。」 「ほっておけない!」 「無駄だ!! 今行っても何も出来ぬ。」 「それでも…私は……」 争うことをやめ、力無く崩れる様に座り込む私に男は、ぐっと堪える様に拳を握り、無理やり私を立たせた。 「立て! 今はその時ではないのだ!」 「何よ! あなたに私と草子の何がわかるの?」 「っ!? わからぬ!ただ、今お前が奴らの仲間になると二度と助ける事が出来ぬ事はわかる!」 「じゃあ、方法があるって言うの?」 「ある!」 「!?」 口論の末、黙らされたのは私だった。 「だから、いまは耐えよ…。 いや、耐えてください。」 「………。」 私はその言葉を信じて良いのかわからず、ただ俯く。
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